営業や接客業、自営業、経営者など、人と関わる仕事にはクレームがつきもの。
クレームが起きた時に、その心得や対処法を知っておくとストレスは大幅に減り、仕事も捗ります。
何よりクレーム時の対応よって、お客様を失うか、さらなる信頼を獲得できるかという分かれ道が作られます。
それゆえ、クレームをどのように受け止めるのかという心構えはとても重要です。
もちろん、クレームが起きないような完璧な仕事を目指すのは理想かもしれません。
しかし、クレームはお客様からの大切な意見であり、自分のした仕事のフィードバックのひとつだと考えると、相手の申し出を今後の改善にどう取り入れるべきかと捉える態度は、クレームをチャンスに変えてくれます。
この記事の筆者である私自身、過去7年間、某金融機関コールセンターで毎日100人ほどのお客様応対をし、そして、日々クレームに見舞われてきた一人です。ある時、社内研修でコーチングコミュニケーション「タイプ別コミュニケーション法」を学び、クレームの回避法として実践してみたところ、みるみるうちに、クレームを収めていくことができました。さらに、お客様のコミュニケーションタイプに合わせたコミュニケーション法を研究していくと、大きなクレームになる前に未然に防げるようにもなり、これによって応対品質が優秀であると社内で評価されていきました。
今日は私が過去学んだ株式会社コーチ・エィが提唱する「コミュニケーション4つのタイプ」を紹介し、タイプ別のコミュニケーションをクレーム対応でどんな風に活かしていくのかを具体的な事例を挙げてお伝えしていきます。
ぜひ、参考にしていただいき、クレーム応対だけでなく日頃のお仕事のコミュニケーションに活かしてくださると嬉しいです。
コミュニケーション4つのタイプーあなたはどのタイプ?
株式会社コーチ・エィによるとコミュニケーションには「4つのタイプ」があるといわれています。
「タイプ分け™」は、「人をもっとも特徴づけるのは、他者とのコミュニケーションである」という前提に立ち、臨床心理学、組織行動学などをベースにつくられたコミュニケーションの分類方法です。「感情表出」と「自己主張」という2つの軸で、コミュニケーションのタイプを4つに分けて考えます。この2つの軸は、企業に勤める2万人(20歳以上)を対象に、対人関係やリーダーシップに関する調査を実施し、その結果から導き出されました。タイプと特徴的な性質、そしてその性質や特徴と、それにあった効果的なコミュニケーション法が示されています。
タイプ① コントローラー
「特徴」
・結果を重視し合理的に判断、自分で決断するタイプ。
・人の気持ちというよりデータや事例を重視する。
・リーダーシップをとることを好む。
タイプ② プロモーター
「特徴」
・人に影響を与えることが好きで、注目されることを好む。
・アイディアが豊富で楽しいことが好き。
・エネルギッシュ。
タイプ③ サポーター
「特徴」
・調和を重んじ、人の気持ちを理解しようとする。
・自己主張は少なめ。
・気配り上手。
タイプ④ アナライザー
「特徴」
・客観的に物事を分析し、冷静に行動し慎重。
・正確に物事をコツコツと進める。
・人とあまり会話をしなくてもそれほど苦にならない。
さて、あなたはどのタイプでしたか?
また、あなたの一番苦手なお客様はどのタイプでしょう?
あなたが好きなお客様のタイプは?
ここで一息ついて、考えてみてみましょう。
顧客リストを出してきてコミュニケーションを改善したいお客様をピックアップしてもいいかもしれません。
ここで一番重要なことは、まずは自分のコミュニケーションタイプがどれなのか?を知ることが大事だといわれています。
その理由は、人は、自分が好なアプローチ、苦手なアプローチを基準にし、「きっと相手も同じだろう」という思い込みからコミュニケーションをとりがちだからです。自分のタイプを知った上で、つまり自分の思い込みに気づいた上で、次に、人が大事にしている価値観やアプローチ方法に違いがあることを認識し、理解を深めていくのがいいといわれています。
またこれは性格診断のような「この人はこういう人」という分類分けに使うのと違い「よりどの要素を多く持っているか」という基準で活用されるといいようです。なぜなら人は立場や状況が変われば価値観や重要性も変わりコミュニケーションのアプローチも変わるからです。
それでは次に、それぞれのタイプのクレーム時の対処法について解説していきます。
タイプ別コミュニケーション法を知って相手の価値やニーズを満たそう
クレーム対応で一番大切なこと、それは先ほどお伝えしたように早い段階で「お客様の信頼を獲得すること」です。
もし少しでも信頼を損なうと、相手はこちらの話を疑ってかかるようになり、どんどん不安になり、不安からイライラ、怒りの感情が大きくなっていきます。一度不信感を持たれるとそれを覆して信頼を回復するところから始めなければならなくなります。
信頼を獲得するためにも「コミュニケーション4つのタイプ」の特徴を知り、効果的な関わり方を学びましょう。
タイプ①コントローラータイプへの関わり方
コントローラータイプの特徴は以下の3つでした。
・結果を重視し合理的に判断、自分で決断するタイプ。
・人の気持ちというよりデータや事例を重視する。
・リーダーシップをとることを好む。
コントローラータイプはチームリーダーやマネージャー、そして経営者などに多いタイプと言われています。
私的な感情や私的な見解にとどまらず、全体を見て判断する能力が高く、決断力とそのスピードも早いのが特徴です。
「効果的なコミュニケーションアプローチ」
このタイプの人がクレーム(要求)を述べてこられたときには、
1、単刀直入に話す。
2、結論から話し要点を伝える。根拠を伝える。
3、何かを知りたい時は、質問というより「〇〇について教えてほしい」と伝える
このポイントが重要です。
コントローラータイプは、スピーディに結果と対処法を伝えると満足感をもたれやすいです。
私はコールセンターに長く在籍していましたが、この接客窓口は丁寧で高品質な対応を教育されており、逆に言い回しがくどいと思われる時があります。コントローラータイプは丁寧で感情的なお詫びを主張されるより、起きていることの事実と結論を先に伝え、それによってもたらされる影響がどんなものなのか、そしてそれを収束する方法や時期がいつなのかという正しい情報を冷静にそして簡潔に伝えすることが最も大切です。
お客様が出来事の全体像をつかんだ後に、なぜこうなったのかという原因や今後の改善策を伝え、感情的に真摯なお詫びという順番でお話すると相手は一番安心し、信頼を感じていただきやすいです。
逆にこのタイプの人に、長々と言い回しの長いお詫びや、結論が先回しになるコミュニケーションをとると、相手はイライラしたり、不信感を感じます、そのためにクレームが長引たことは何度もあります。
タイプ②プロモータータイプへの関わり方
プロモータータイプは
人に影響を与えることが好きで、注目されることを好む。
アイディアが豊富で楽しいことが好き。
エネルギッシュ。
が特徴です。
「プロモータータイプへの効果的なコミュニケーションアプローチ」
1.褒める。
2.明確にリアクションを返す。
3.自由に話をしてもらう。
人に響力を与えていると感じることや注目をされることに価値を感じるタイプの人の方へは、相手の申し出がいかに自分に影響を与えてくれたのか、誰のどんな役にたっていくかなどを伝えると相手の自尊心のニーズを満たすことにつながります。
聞き上手になり、あちこち話題が飛んでも自由に話していただき、都度都度、きちんと承認の言葉を伝えます。このタイプの方にこれとは逆の冷静に結論や事実だけを淡々と話すアプローチは「自分のことが理解してもらえない、ぞんざいに扱われた」と思われてしまい効果です。
タイプ③サポーターへの関わり方
サポーター対応は「縁の下の力持ち」タイプです。
調和を重んじ、人の気持ちを理解しようとする。
自己主張は少なめ。
気配り上手。
「サポータータイプへの効果的なコミュニケーションアプローチ」
1、圧力をかけすぎない。
2、Noと言ってもよい、ということを伝える。
3、役に立ちたい気持ちが強いので、助かっていることを言葉で伝える。
プロモータータイプが感情表現豊かで顔や言葉で感情が表に現れやすいのと比べ、サポーターは「陰の立役者」といわれると最も承認されたと感じるタイプの人です。
このタイプの多くの人はついつい人の期待に応えようと行動し、人間関係で対立を避ける傾向があります。そのため、比較的言いたいことを我慢したり、リクエストやお願いに対して「YES」と言いがちです。
このタイプのクレーム対処法は、まず相手の感情に寄り添う丁寧な頷きです。相手が口に出しずらい、感情を汲み取り、お詫びや感謝の気持ちをまず述べる。気遣いに価値を置くタイプだからこそ、こちら側の気遣いがあることに、安心され信頼してもらいやすいです。サポータータイプの人には、会話の冒頭は承認や感情面での配慮を重要視したコミュニケーションから始まるとスムースに進みやすいです。
これと真逆なのはコントローラータイプです。この人にこれをしてしまうと相手から信頼を損なってしまうことも考えられ、タイプ別コミュニケーションアプローチを変えるだけでクレームが収まっていくのがこの点です。
タイプ④ アナライザータイプへの関わり方
アナライザータイプの特徴は以下の3つ。
客観的に物事を分析し、冷静に行動し慎重。
正確に物事をコツコツと進める。
人とあまり会話をしなくてもそれほど苦にならない。
「アナライザータイプの方とのコミュニケーションアプローチ」
1、データを示す。
2、目的やプロセスなど論理的に考えやすいように伝える。
3、表現が少なくても見守る。
このタイプの方は冷静沈着で感情的なアプローチよりも論理的に理解することを重要視されます。
一見、感情の起伏が表にできないコントローラータイプと思われがちですが、コントローラータイプとの大きな違いは「プロセスを一番重視する」ところです。アナライザーは分析好きなため、起きた出来事の相関関係やプロセスに対する説明がしっかりあることに信頼性を感じます。
コントローラータイプは、スピーディに結果と対処法を伝えると満足しやすいのに比べて、なぜそうなのか?を事細かに伝えないと納得と満足感をえてもらいにくいです。このアナライザータイプの方にプロモーターやサポータータイプのような感情的な労いや承認だけでクレームに対応しようとすると逆に不信がられかえって感情を逆なでしていします。こちらも過去のクレームで経験済みで苦労しました(とほほ)。
まとめ
クレーム対応で一番重要なポイントは早い段階で相手、お客様の信頼を獲得することです。コミュニケーションの取り方によってこちら側がよかれと思っている親切で丁寧なコミュニケーションでも、相手はイライラを募らしたり、お詫びをしても不信感を募らせてしまい逆効果になることは多々あります。コミュニケーション4つのタイプを知ると、コミュニケーションが円滑になる理由は、相手の価値観を大事にしてアプローチをする点です。お客様の心理的ニーズを満たすと好感を持っていただき、クレーム対応時間が短縮され、ストレスもかなり軽減されます。また、仕事だけでなく、身近な家族や友人間のやりとりにも使ってみると相手の態度や価値感を大切にできる機会となります。